認知症 脳血流SPECT読影のポイント
  • ● 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • ● 3D-SSP/Z-Graphによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」を使用することで実施可能です。(※認証番号:301ADBZX00045000)
  • ● 本コンテンツで使用している画像の提供元:兵庫県立姫路循環器病センター

 

このページ内のコンテンツは症例提供いただいた近畿大学医学部 放射線医学教室 放射線診断学部門 教授 石井一成先生による音声と動画の解説がございます。本ページ内の「音声再生」をクリックすると音声が、画像内の「」をクリックすると動画が再生されます。

画像読影の実際 行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)

70歳台後半 男性 MMSE 28点

提示症例について 音声再生

症例の背景

主     訴
怒りっぽい 性格変化
既  往  歴
50年前 気分障害 慢性腎不全
現  病  歴
4年前から性格変化がみられ、脈絡のない話題を妻に振り大声で怒鳴るようになった。過去の自慢話を繰り返し話し続ける。多幸的で興奮・衝動性がみられ、会話中に急に思いついた異なる話題を話し続ける。閉じこもりがちで無為に過ごしている。偏食がみられ、間食を繰り返す。摂食・更衣・入浴・排泄などの基本的な日常生活動作は自立しているが、服薬管理が困難になっている。
神経学的所見
脳神経系・運動系に明らかな異常を認めない。錐体外路症状・錐体路症状を認めない。一般概念の障害と保続を認める。語流暢性が低下している。
MRI

 

bvFTD疑い例の読影のポイント
FTLD(前頭側頭葉変性症)の中のFTDは前頭葉や前部側頭葉の萎縮が目立ち、内側側頭葉の萎縮も強いです。Pick型ではknife blade状の萎縮が特徴的です。意味性認知症では優位半球の側頭葉の萎縮が目立ちます。進行性非流暢性失語では左シルビウス裂周囲の萎縮が著明です。

 

読影所見 (萎縮部位 : 赤丸 脳血管性病変部位 : 青丸)
両側前頭葉に強い萎縮がみられたが、knife blade状までは至っていない。両側前部側頭葉、両側海馬の萎縮もみられた。左レンズ核にラクナ梗塞を認めた。
123I-IMP SPECT画像(横断像)

 

bvFTD疑い例の読影のポイント
前頭葉、前部側頭葉の血流低下が著明です。前頭葉底面の低下が優位です。進行すれば頭頂葉や、後部帯状回の低下もみられますが、低下の度合いは圧倒的に前頭葉が強いのでADと鑑別できます。線条体が低下することもあります。

 

読影所見 (低下部位:赤丸)
両側前頭葉、前部側頭葉の強い血流低下がみられ、両側線条体の低下もみられた。両側頭頂連合野もわずかな低下がみられた。

3D-SSP/Z-score画像

 

3D-SSP/Z-score画像評価のポイント
血流分布画像上の低下部位とZ-score画像の低下部位が一致している事を確認し、血流低下パターンに疾患特異性があるか確認します。

 

読影所見 (低下部位:赤丸、赤矢印)
両側前頭葉の強い血流低下がみられた。脳表血流画像では両側前部側頭葉も低下しているが、Z-score画像では血流画像ほどの低下は認めない。

Z-Graph 解析結果

 

頭頂葉や後頭葉などの後方領域に設定した関心領域では設定された閾値を超えた血流低下はみられない。(AD、DLBパターンはみられない)

読影(診断)結果についての解説

 

MRIでは両側前頭葉、前部側頭葉、海馬の萎縮がみられた。海馬萎縮があるからというだけでADと診断は出来ない。脳血流SPECTでは両側前頭葉、前部側頭葉の強い血流低下がみられ、両側の線条体も低下していた。本例は左レンズ核にラクナ梗塞があり、これが左前頭葉の血流低下に影響している可能性もあるが、右前頭葉も低下していることから本例の画像所見はbvFTDによるものと考えた。