骨SPECT定量解析ソフトウェア・GI-BONEを用いた顎骨骨髄炎のモニタリング

  • 掲載されている薬剤の使用にあたっては、各製剤の最新の電子添文を参照ください。
  • 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • GI-BONEによる画像解析は核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON*を使用することで実施可能です。(*認証番号:301ADBZX00045000)
  • 画像提供:独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター 歯科口腔外科 秦 浩信 先生

骨SPECT定量解析ソフトウェア・ GI-BONEを用いた顎骨骨髄炎のモニタリング

秦 浩信 先生
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター 歯科口腔外科

GI-BONEの特徴

骨SPECT画像をSUV化することにより、様々な定量解析が可能です。

2検査のVOI定量値の変化がグラフ表示されます。

VOIの位置を8方向からの画像で確認できて、出力保存できます。

 

 

検査目的・症例背景

顎骨骨髄炎の活動性をモニタリングするため骨SPECTを撮像し、画像解析ソフトウェアであるGI-BONEを用いて経時的に定量解析を行った。
患者は70代男性で、前立腺がん骨転移のため、当院泌尿器科にて2013年1月から内分泌療法が開始された。2015年1月からはゾレドロン酸(4mg)を約2年にわたり4週間毎に24回投与されていた。2016年11月頃より下顎右側歯肉の疼痛にて義歯の装着が困難となってきた。また、同12月PSA値が徐々に上昇してきたため、化学療法を導入目的に泌尿器科へ入院した。その際、下顎右側歯肉の腫脹と疼痛を主訴に当科を紹介受診した。初診時、ゾレドロン酸は主治医の判断で休薬を開始されていた。

 

初診時 臨床所見・診断

初診時、下顎右側臼後部に瘻孔と排膿を2か所認め、また瘻孔周囲歯肉に強い腫脹と疼痛を認めた。右側下顎骨骨髄炎の診断のもと初診日よりアモキシシリンにて消炎を開始した。消炎開始後1週間目には瘻孔周囲の腫脹はやや改善が認められたが、その後8週間以上の骨露出を認めたため、下顎右側の骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)Stage2と診断した。
顎骨骨髄炎の消炎評価のため、消炎開始から1週間後、5か月後、8か月後にも骨SPECTシンチグラフィを撮像した。

 骨シンチグラフィのプラナー像の経時変化>>
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骨相(後期像)のプラナー像では下顎骨右側への集積の経時的な減弱は確認できるが、客観的な評価は困難である。

 
 GI-BONEによるSPECT解析1(MBVの経時変化)>>

GI-BONEによる画像の解析結果を示す。本ソフトウェアは3次元的関心領域(Volume of interest: VOI)におけるSUVのほか、閾値を設定することで集積体積であるMBV(metabolic bone volume)(cm3)を自動算出することが可能である。本症例では閾値をSUV=5に設定している。解析結果の緑色の領域の体積がMBVである。

 GI-BONEによるSPECT解析2(SUVmaxとMBVの定量解析)>>

GI-BONEにて解析を行ったところ、SUVmax、MBV共に著明な改善が認められた。

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骨髄炎部位への99mTc製剤の集積強度を示す。
SUVmax値は7.04、5.38、3.12と漸減している。

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集積体積を示すMBVも4.29cm3、 0.35cm3
0cm3と劇的に改善している。

J. Jpn. Stomatol. Soc. 68(1):38-44. March. 2019 図5を一部改変
 転帰>>

初診から18か月のCTにて腐骨の分離像が認められたため、局所麻酔下に腐骨除去を行い、ARONJは寛解に至った。

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J. Jpn. Stomatol. Soc. 68(1): 38-44. March. 2019 図6 写真をカラーへ変更
  • 初診時CT斜位像で右側下顎体部には骨硬化性変化が認められる。
  • 初診から1年6か月では腐骨の分離が認められる。
  • 初診から1年7か月。初診時よりも露出骨の範囲は拡大しているが、排膿や周囲に感染所見は認めない。局所麻酔下に腐骨除去術を施行。右上に除去した腐骨を示す。
  • 術後1か月。骨露出は認めない。
まとめ

BONEを用いて骨SPECT定量解析を行うことで、顎骨骨髄炎の活動性についてモニタリングが可能であった。GI-BONEは骨SPECTシンチグラフィの有用性を高めるソフトウェアとして今後更なる臨床応用が期待できる。

引用文献: J. Jpn. Stomatol. Soc. 68(1): 38-44. March. 2019