去勢抵抗性前立腺癌患者における
VSBONE BSIによる
塩化ラジウム(<sup>223</sup>Ra)治療の評価

  • 掲載されている薬剤の使用にあたっては、各製剤の最新の電子添文を参照ください。
  • 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • VSBONE BSIによる画像解析は核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON*を使用することで実施可能です。(*認証番号:301ADBZX00045000)
  • 解析結果を必ず目視し、問題が無いことを確認したうえでご利用ください。
  • 画像提供:札幌医科大学医学部 泌尿器科学講座 橋本 浩平 先生

去勢抵抗性前立腺癌患者におけるVSBONE BSIによる塩化ラジウム(223Ra)治療の評価

監修

橋本 浩平 先生
札幌医科大学医学部 泌尿器科学講座

骨転移治療に用いられる塩化ラジウム(223Ra)は骨転移部位の腫瘍細胞に対する直接的な殺細胞効果を有し、アンドロゲン経路への作用を示さないため、PSA変化を生じにくく、塩化ラジウム(223Ra)の治療効果をPSAのみを指標にモニタリングすることは困難である。
塩化ラジウム(223Ra)が投与された去勢抵抗性前立腺癌患者に対し、血液マーカーおよび核医学解析ソフトウェアVSBONE BSIによって算出されたBSIにより骨転移の治療効果の評価を行った。

Bone Scan Index(BSI)は米国Memorial Sloan Kettering Cancer Center によって提言された全身骨格に対する骨転移腫瘍領域の構成比を百分率で表した指標です1)

VSBONE BSIは骨シンチ全身像において骨格の解剖構造を認識し、膀胱等を除いた高集積部位(ホットスポット)の検出を行い、BSIを算出します2)

1) J Nucl Med 1997; 38: 1401-1406
2) Int J Comput Assist Radiol Surg. 2020; 15: 389-400

患者背景
60歳台男性 前立腺癌多発骨転移 臨床病期:T4N1M1b


X-1年秋ごろより左肩痛を自覚し近医整形外科通院、疼痛が軽快しないためX年3月他院整形外科を受診、 転移性骨腫瘍疑いにてX年4月に近医内科を受診した。同月のCTにて多発骨転移および骨盤内リンパ節転 移が認められた。またPSAは5722.8ng/mLと高値であった。

 

治療経過

X年4月:当科紹介。PSA 3794.0ng/mL、膀胱浸潤所見が認められデガレリクス酢酸塩(120mg×2)を投与開始した。同月に行った骨シンチグラフィではEODスコア4の多発骨転移が認められた。

X年5月:PSA 101.0ng/mL、ALP 7376U/L(JSCC法による)と引き続き高値を示したため、外科的去勢術を施行した。同月の前立腺生検による病理結果ではGleason score 4+3=7、Grade group 3、adenocarcinomaと診断された。

X年6月:PSAは36.4ng/mL、ALPも3762U/Lと低下した。主訴の左肩痛および多発骨転移による骨折予防のためゾレドロン酸(4mg×1/4週)を開始した。PSAおよびALPは引き続き緩やかに低下した。

X年11月:実施したCTでは臓器転移はなく、リンパ節転移は完全奏効(CR:complete response)に至った。多発骨転移の治療を目的として塩化ラジウム(223Ra)による治療をX年12月からX+1年4月まで4週ごと、計6回行った。

X+1年5月:塩化ラジウム(223Ra)治療6回完遂後に施行した骨シンチグラフィでは骨転移の改善が認められた。またCTでも臓器転移も認められずリンパ節転移CRに変化がなく、骨転移部位には化骨化がみられた()。しかしながらPSAおよびALPは依然高値を示したため、 アビラテロン酢酸エステル(100mg)およびプレドニゾロン(10mg)を開始し、治療を継続した。

X+1年12月:骨シンチグラフィでは骨転移の改善は維持されており、CT所見上では臓器転移は認められず、リンパ節転移もCRで骨転移部位には化骨化がみられている()。

after

 

after

 

after
 骨転移の変化>>

骨転移治療を目的とし、塩化ラジウム(223Ra)治療を完遂した本症例において骨転移は改善し治療効果が認められた。
塩化ラジウム(223Ra)後のVSBONE BSIにより算出されたBSIおよびHS(n)は、骨転移の治療効果を反映し、低下を示した。



 

 骨代謝マーカー推移>>

本症例において塩化ラジウム(223Ra)による治療効果が認められ、また、骨代謝マーカー(BAP、TRACP-5b、P1NP)も改善を認めたが、PSAは上昇を示した(PSA/ALPの推移を参照)。
塩化ラジウム(223Ra)治療ではPSA変化が生じにくいことがあるため骨転移のモニタリングには疼痛の有無や骨シンチグラフィなどの画像評価、骨代謝マーカーなどから総合的に評価することが望ましいとされている1)

1)日本医学放射線学会,日本核医学会,日本泌尿器科学会,日本放射線技術学会,日本放射線腫瘍学会:塩化ラジウム(Ra-223)注射液を用いる内用療法の適正使用マニュアル,第二版(2019)

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まとめ

塩化ラジウム(223Ra)による骨転移治療を施行した本症例において、骨転移の治療効果はPSAに反映されなかったが、VSBONE BSIにより算出されたBSIは塩化ラジウム(223Ra)治療後に低下し、骨転移の病勢と一致した。
VSBONE BSIによるBSIは塩化ラジウム(223Ra)による治療効果の評価に有用である可能性が示唆された。

 

使用上の注意
 VSBONE BSIの解析対象について

VSBONE BSIは、成人の骨シンチ全身像を解析対象としています。

小児の場合、骨端軟骨への薬剤の集積や全身の骨重量比など、成人と相違があるため、正しいBSIが算出できません。

頭頂から足先まで仰臥位で撮像されており、前面像と後面像が対になった画像データの解析を前提としているため、下記のような画像が入力された場合、正しく解析できません。
・ 前面像と後面像が対になっていない画像
・ 前面像と後面像が視野内の患者位置と異なる画像
・ 全身を撮像していない画像(胸部や腹部のみ撮像した画像、頭部や膝下を撮像していない画像など)
・ 側臥位や伏臥位など、仰臥位以外で撮像した画像(膝を立てたり、身体の前で腕を交差させた場合も含みます)

下記のような画像が入力された場合、データによっては正しく解析できない可能性があります。 解析結果を目視し、問題が無いことを確認したうえでご使用ください。
・ 人工関節や骨折治療用のプレートなど、体内に人工物が存在する画像
・ ハルンバッグなどが描出されている画像
・ 成人の正常骨格と著しく異なる形状の骨格を撮像した画像
・ 画像マスク処理、フィルタ処理、分解能補正処理など加工された画像

VSBONEによる骨格の解剖構造認識は、撮像時の体位や入力される画像の質(S/N、コントラスト、均一性)など様々な理由により、正しい結果を得られない場合があります。

骨格の解剖構造認識が正しく行われていない場合、誤ったBSIが算出される可能性があります。

骨格の解剖構造認識の結果を修正・編集することはできません。

解析結果を必ず目視し、問題が無いことを確認したうえでご利用ください。

動作環境

VSBONE BSIは下記の要件を満たす汎用IT機器にインストールしてください。

CPU
動作周波数2GHz以上
メモリ
4.0GB以上
OS
Windows 7/8.1/10(いずれも日本語版)
ハードディスク空き容量
インストール用として1GB以上(データ領域は別途必要になります)
ディスプレイ
1280X1024ピクセル以上の解像度を持ち、16,777,216色以上表示可能なもの

 

個人情報保護のため、本サイトでは臨床経過に関して検査日等の具体的な日付は入れておりません。