FDG-PET/CTによるリンパ腫の病期診断
監修
永井 宏和 先生
国立病院機構名古屋医療センター 血液・腫瘍研究部 部長
執筆
寺内 隆司 先生
公益財団法人 がん研究会有明病院 核医学部 副部長
FDG-PET/CTの位置づけ
2018年に刊行された造血器腫瘍診療ガイドライン(日本血液学会編)のリンパ腫領域では、臨床病期診断にLugano分類(2014)の記載が追加された。Lugano分類はFDG-PET/CT(以下PET/CT)を用いた病期分類であり、簡潔に臨床病期を判定できるように作られている。またPET/CTはリンパ腫の治療効果判定でも有用性が報告されているが、FDG集積の程度が組織型により異なるので、病変へのFDG集積を確認する為、病期診断時にPET/CTを撮像することが望ましい。
2014年Chesonらによって、リンパ腫の病期診断・治療効果判定のために新しい国際基準であるLugano分類が発表された。FDG‐avidなリンパ腫ではPET/CTをルーチンに用いるよう推奨している(表1)。
表1 初発の節性リンパ腫の病期診断基準
病期 | 病変部位 | 節外部位 | |
---|---|---|---|
限局期 | Ⅰ期 | 1つのリンパ節、もしくは1つのリンパ節領域にのみ病変が存在 | リンパ節病変を伴わない1つの節外病変が存在 |
Ⅱ期 | 横隔膜同側の2つ以上のリンパ節領域に病変が存在 | リンパ節病変の広がりはⅠ、Ⅱ期にとどまるが、近接した節外臓器に限局した病変を認める | |
Ⅱ期 (bulky病変を有する*) |
bulky病変を有するⅡ期 | 該当なし | |
進行期 | Ⅲ期 | 横隔膜両側のリンパ節領域に病変が存在 ; 脾病変と横隔膜上側のリンパ節病変が存在 | 該当なし |
Ⅳ期 | リンパ節外臓器に非連続性病変が存在 | 該当なし |
病変の広がりは、FDG-avidなリンパ腫はPET/CTで、nonavidなリンパ腫はCTで決定する。扁桃、Waldeyer咽頭輪、脾臓は節性組織とする。
*bulky病変を有するⅡ期を限局期として治療するのか、進行期として治療するのかについては、病型や予後指標により決定する。
Cheson BD, et al.: J Clin Oncol 2014; 32: 3059-3067
リンパ腫の臨床病期分類においては、ホジキンリンパ腫を対象に開発されたAnn Arbor分類(Cotswolds修正案)が広く非ホジキンリンパ腫にも適応されてきた。 Ann Arbor分類はCTに基づき病期診断を行う。PET/CTはホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫の病期診断においてCT単独より正確で、特に節外病変の感度が向上する。そのため、 PET/CTでは表2に示すようにUpstageされることが多く、治療法の選択が異なる場合もある。特にCT単独で限局期と判定された濾胞性リンパ腫の患者でUpstageとなりやすいと報告されている。
表2 リンパ腫の病期診断におけるPETまたはPET/CTとCT単独の比較研究
報告者 | 年度 | PET専用機或いはPET-CT | 症例数 | 疾患 | Upstaging(%) | Downstaging(%) | 治療方針の変更(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Bangerter et al | 1998 | PET | 44 | HL | 12 | 2 | 14 |
Partridge et al | 2000 | PET | 44 | HL | 41 | 7 | 25 |
Jerusalem et al | 2001 | PET | 33 | HL | 10 | 10 | 3 |
Weihrauch et al | 2002 | PET | 22 | HL | 18 | 0 | 5 |
Munker et al | 2004 | PET | 73 | HL | 29 | 3 | NS |
Naumann et al | 2004 | PET | 88 | HL | 13 | 8 | 20 |
Hutchings et al | 2006 | Mostly PET-CT | 99 | HL | 19 | 5 | 9 |
Rigacci et al | 2007 | Mostly PET | 186 | HL | 14 | 1 | 6 |
Buchmann et al | 2001 | PET | 52 | HL(n=27)、 NHL(n=25) |
8 | 0 | 8 |
Wirth et al | 2002 | PET | 50 | HL(n=19)、 NHL(n=31) |
14 | 0 | 18 |
Raanani et al | 2006 | PET-CT | 103 | HL(n=32)、 NHL(n=68) |
31 | 1 | 25 |
Elstrom et al | 2008 | PET-CT | 61 | HL、NHL | 18 | 5* | 5 |
Pelosi et al | 2008 | PET | 65 | HL(n=30)、 NHL(n=35) |
11 | 8 | |
Karam et al | 2006 | PET | 17 | FL | 41 | 0 | 29 |
Janikova et al | 2008 | Mostly PET | 82 | FL | NS | NS | 18 |
Wirth et al | 2008 | PET | 42 | CTでStageⅠ-Ⅱと分類されたFL | 29 | 0 | 45 |
Le Dortz et al | 2010 | PET-CT | 45 | FL | 8 | 0 | 18 |
Luminari et al | 2013 | PET-CT | 142 | FL | 11 | 1 |
NS |
- CT : コンピュータ断層撮影
- HL : ホジキンリンパ腫
- NS : not stated
- FL : 濾胞性リンパ腫
- NHL : 非ホジキンリンパ腫
- PET : positron emission tomography
- *False negative.
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