特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版
特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版のガイドラインに関してご紹介します。
診断基準
特発性正常圧水頭症(iNPH)の診断と治療に関するアルゴリズム
*1: | EvansIndex | = | 両側側脳室前角間最大幅 |
その部位における頭蓋内腔幅 |
*2:DESH(くも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症): 脳室の拡大に加えて,くも膜下腔が高位円蓋部および正中部で狭小化し,シルビウス裂や脳底槽では拡大している所見を示す水頭症
Evans Index:両側側脳室前角間最大幅/その部位における頭蓋内腔幅比、0.3が閾値である。
DESH所見:脳室の拡大に加えて,くも膜下腔が高位円蓋部および正中部で狭小化し,シルビウス裂や脳底槽では拡大している所見。
脳梁角(callosal angle;CA):前交連-後交連(anterior commissure;AC-posterior commissure;PC)面に垂直で後交連を通る冠状断面上の左右脳梁がなす角度が急峻(90°以下)であること。
Z-Evans Index:前交連(AC)と後交連(PC)を結ぶ直線(AC-PC line)に垂直で,ACを通過する冠状断MRIで,側脳室前角のz(縦)軸方向の幅を正中頭蓋内径で割った比、0.42が閾値である。
Brain/ventricle ratio(BVR):Z-Evans Indexと同じ冠状断において、側脳室の直上の頭蓋内幅とz軸における側脳室の幅の比。AC点上の冠状断面で1.0未満,PC点上で1.5未満である。
脳血流SPECTでは,脳梁周囲,シルビウス裂周囲での低下が報告されてる。また高位円蓋部・正中部皮質は見かけ上相対的な血流増加を示すが,それは高位円蓋部・正中部のくも膜下腔が減少し灰白質密度が高いことを反映している。画像統計解析法3D-SSPでは,この所見はconvexity apparent hyperperfusion sign(CAPPAH sign)として表現される。iNPHにみられるこのような所見および他疾患に特徴的にみられる所見から,脳血流SPECTはAlzheimer病などの他の認知症疾患との鑑別・合併の有無の診断に有用であると考えられる。
CAPPAH sign(Convexity APPArent. Hyperperfusion)
Alzheimer病の併存も多いことが明らかになってきた。9例のiNPHに対して剖検による病理所見で判定すると併存率は89%,診療記録を用いて後方視的,臨床的に判定すると55.6%であった。脳バイオプシーで採取した標本で病理学的に判定した対象症例数28例,37例,111例の3つの研究における併存率はそれぞれ25%,67.6%,45.6%であった。わが国で行われた全国レベルの診療施設に対するアンケート調査では3,079例のiNPHにおけるAlzheimer病の併存率は17.6%であった。
iNPHの診断は,特徴的な臨床症候と画像の両者によってなされる。したがって臨床的には,高齢者において,認知障害をきたす疾患、歩行障害をきたす疾患,およびその両方をきたす疾患,画像的には脳室拡大をきたす病態との間で慎重な鑑別を要する。認知障害や歩行障害の質などの臨床症候の差異,画像上の差異が鑑別に役立つ。臨床的には特にAlzheimer病,皮質下血管性認知症,レビー小体型認知症,Parkinson病,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,血管性パーキンソニズム,多系統萎縮症などとの鑑別が重要である。
Alzheimer病の併存も多いことが明らかになってきた。9例のiNPHに対して剖検による病理所見で判定すると併存率は89%,診療記録を用いて後方視的,臨床的に判定すると55.6%であった。脳バイオプシーで採取した標本で病理学的に判定した対象症例数28例,37例,111例の3つの研究における併存率はそれぞれ25%,67.6%,45.6%であった。わが国で行われた全国レベルの診療施設に対するアンケート調査では3,079例のiNPHにおけるAlzheimer病の併存率は17.6%であった。