前立腺がん治療法あれこれ
検査には、血液検査によるPSA測定、超音波検査、直腸診検査(ちょくちょうしんけんさ)を行い、がんが疑われる場合は前立腺針生検(はりせいけん)を行います。針生検では採取した前立腺の組織を顕微鏡で観察してがんの診断を行います。がんであった場合はその悪性度を合わせて調べます。
がんと診断された場合はCTやMRIなどの画像診断でがんの広がりや転移の有無を調べます。また、骨への転移を調べるため骨(こつ)シンチグラフィを行います。
以上の検査結果を参考にして治療方針を考えますが、年齢、全身の状態、患者さんのご希望が治療法を選ぶ上でとても大切になります。
以上の検査結果を参考にして治療方針を考えますが、年齢、全身の状態、患者さんのご希望が治療法を選ぶ上でとても大切になります。
前立腺がんの治療には、早期であれば「手術療法」「放射線療法」「ホルモン療法」「待機療法」などさまざまな治療方法があります。
「手術」では、前立腺精のうおよび周囲のリンパ節を摘出します。患者さんの体への負担は少なからずあり、手術時間は3~4時間、入院は開腹の場合には2~3週間程度が必要になります。
「ホルモン療法」は前立腺がんを増殖させる男性ホルモンの分泌や作用を抑制し、前立腺の細胞に男性ホルモンの影響が及ばないようにしてがんを縮小させ進展を防ぐ治療です。
「無治療経過観察(むちりょうけいかかんさつ)」や「待機療法」は、PSA値が低く、生検(せいけん)の結果からがんの病巣(びょうそう)が小さく悪性度も低く、直腸診(ちょくちょうしん)や画像の検査からがんの広がりがない人で、すぐに体への悪影響をきたさないと判断された場合に行われるものです。治療は行わずに、PSAの値などを定期的に見ていきます。
「放射線療法」は一般的に体への負担が少ない治療方法です。種類としては大きく分けて二通りあります。1つは体の外から放射線をあてる外照射療法(がいしょうしゃりょうほう)。もう1つは体のなかに放射線源を入れ、なかから放射線をあてる組織内照射療法(そしきないしょうしゃりょうほう)です。
「外照射療法(がいしょうしゃりょうほう)」とは、体の外から病巣(びょうそう)にX線などの放射線を照射してがん細胞を死滅させる方法です。前立腺がんの場合、週5日の通院治療を2ヶ月間程度続ける必要があります。
「組織内照射療法(そしきないしょうしゃりょうほう)」と呼ばれる小線源療法(しょうせんげんりょうほう)には、組織内照射(そしきないしょうしゃ)および腔内照射(くうないしょうしゃ)があり、さらに低線量率(ていせんりょうりつ)と高線量率(こうせんりょうりつ)の2種類に分けられます。そして、がんの部位や種類などにより治療に適切な照射方法を選択します。ここでは“低線量率(ていせんりょうりつ)”の“組織内照射(そしきないしょうしゃ)”である、「ヨウ素125シード線源(せんげん)の永久挿入による前立腺がん小線源治療(しょうせんげんちりょう)」を紹介します。
治療には2時間程度、入院期間は数日間程度で済み、体への負担が小さく、手術と同様、がんを完治させる可能性のある治療法です。
治療には2時間程度、入院期間は数日間程度で済み、体への負担が小さく、手術と同様、がんを完治させる可能性のある治療法です。
小線源治療(しょうせんげんちりょう)の対象は早期の前立腺がんであり、前立腺内にとどまっているがんしか治療は行いません。転移や浸潤(しんじゅん)がない病期Bといわれる場合が良い適応です。
PSA値やがんの悪性度が高いなど病巣(びょうそう)の進展が予測される場合などは、外照射療法(がいしょうしゃりょうほう)を併用することがあります。
PSA値やがんの悪性度が高いなど病巣(びょうそう)の進展が予測される場合などは、外照射療法(がいしょうしゃりょうほう)を併用することがあります。
シード線源と呼ばれる非常に弱い放射線を出す長さ約4.5mm、直径約0.8mmの小さな線源を前立腺内全域に50~100個程度挿入して、前立腺全体へ放射線を照射します。
シード線源はチタン製でカプセル状になっており、中に放射性ヨウ素125が密封されています。このカプセルは永久に前立腺内に残りますが、放射線は徐々に弱まり1年後にはほとんどゼロになります。
放射線を前立腺内に集中して照射する治療法であるため大きな効果が期待できます。また、周りの膀胱(ぼうこう)や直腸(ちょくちょう)への影響や副作用も少なく、身体への負担も手術に比べて軽く、入院期間も短くて済みます。治療後の性機能は、7割ほどの方が維持出来ると言われています。
治療は、泌尿器科医、放射線腫瘍医(ほうしゃせんしゅようい)、麻酔科医、看護師、放射線技師などからなる医療チームにより行われます。
治療は下半身麻酔または全身麻酔がかかったうえで行います。コンピュータでシード線源を入れる場所と数を計画したうえで、超音波の画像を見ながら前立腺の中へ筒状の針を刺入(しにゅう)し、その針を通してアプリケータという器具を用いてシード線源を挿入していきます。
入院期間は一般的に数日間程度です。
通常病院の個室に入院して、治療後の管理を行います。飲水や食事、院内の歩行など、通常治療の翌日から可能です。シード線源費用を含め、治療は保険適用です。個室料金は、実費となります。
通常病院の個室に入院して、治療後の管理を行います。飲水や食事、院内の歩行など、通常治療の翌日から可能です。シード線源費用を含め、治療は保険適用です。個室料金は、実費となります。
シード線源からの放射線は、ほとんどが前立腺内で吸収され、体外に放出されるものは微量です。そのため周囲の方々が受ける影響は非常に低いものです。普通に日常生活を送ることが可能ですが、念のため一定期間は周囲の人に配慮する必要があるとお考えください。
線源が体内にあることを記した治療者カードは、治療後1年間所持・携帯します。他の病気で診療を受けるときに小線源治療(しょうせんげんちりょう)を受けていることを説明する際に必要です。1年以内に何らかの手術を受けるときには、その主治医から小線源治療(しょうせんげんちりょう)を実施した担当医への連絡が必要となります。
外来通院は経過観察をするために必要です。病状の変化を見逃さないためにも、定期的な通院が必要です。
私たちの日常生活の中では自然に大地や空から微量の放射線被ばくを受けていることはよく知られているところです。
このヨウ素125シード線源を用いた小線源治療(しょうせんげんちりょう)を行った患者さんのご家族や周囲の人にはごく微量ですが放射線被ばくがあります。しかし、自然界の放射線被ばくより少ないものです。治療を受けた方と家族が1メートル離れた所で1回1時間の食事を1日3回、1年間毎日繰り返したとします。その時の家族の方の被ばく線量は胸のレントゲン写真を1枚撮る程度だといわれています。
このヨウ素125シード線源を用いた小線源治療(しょうせんげんちりょう)を行った患者さんのご家族や周囲の人にはごく微量ですが放射線被ばくがあります。しかし、自然界の放射線被ばくより少ないものです。治療を受けた方と家族が1メートル離れた所で1回1時間の食事を1日3回、1年間毎日繰り返したとします。その時の家族の方の被ばく線量は胸のレントゲン写真を1枚撮る程度だといわれています。
シード線源はチタン製でカプセル状になっており、中に放射性ヨウ素125が密封されています。
このカプセルは永久に前立腺内に残りますが、放射線は徐々に弱まり1年後にはほとんどゼロになります。
このカプセルは永久に前立腺内に残りますが、放射線は徐々に弱まり1年後にはほとんどゼロになります。
シード治療は重篤(じゅうとく)な合併症が少なく、治療後の生活の質が良い点などがあげられますが、治療直後から半年ないし1年間は尿が出にくかったり、尿が近くなったりなどの症状が見られることがあります。症状が強いときには内服薬で治療することがあります。
放射線の副作用は一般に治療後早期に起こってくるものと、治療後半年から3年位の間の晩期に起こってくるものとがあります。医師によく相談をしてください。
放射線の副作用は一般に治療後早期に起こってくるものと、治療後半年から3年位の間の晩期に起こってくるものとがあります。医師によく相談をしてください。