- ● 掲載されている薬剤の使用にあたっては、各製剤の最新の電子添文 を参照ください。
- ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
- ● 本コンテンツで使用している画像の提供元:岐阜ハートセンター 松尾 仁司 先生
3.症例紹介
50代男性
●20XX-12年
LDLコレステロール169mg/dL、HbA1c 8.1%で、脂質異常症および糖尿病を指摘されたが、未治療であった。
●20XX年
心電図で軽度のST低下を認め、精査を希望され来院。労作時胸部症状はなし。
血液検査:LDLコレステロール174mg/dL、HbA1c 10.7%
心エコー図:basal-inferior wall、mid-inferior +lateral wallの壁運動低下、LVEF(modified Simpson法)は52%であった。
単純CT:石灰化スコア(Agatston score)817.3 石灰化スコアが400以上の場合は、高い確率(90%以上)で少なくとも1ヵ所の重大な冠動脈疾患が疑われる。
「2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」の年齢、性別、および胸部症状の性状に従った改訂版閉塞性冠動脈疾患の検査前確率(PTP)では11%であるが、心電図、心エコー図、血液検査、石灰化スコアなどの臨床的尤度を加味した修正検査前確率はかなり高くなるため、冠動脈CTAを施行した(下図)。
冠動脈CTA
右冠動脈は低形成、左回旋枝#14に99%狭窄、#15に90%狭窄、左前下行枝に90%狭窄を認める。
冠動脈CTAで閉塞性病変を認めたため、その後の血行再建実施を考慮するにあたり、さらなるリスク評価および虚血心筋量計測のために負荷心筋血流SPECTを実施した(下図)。
負荷心筋血流SPECT
下壁(#15灌流領域)は虚血陰性、左前下行枝および左回旋枝#14領域に虚血を認めた(SSS: 14, SRS: 6, SDS: 8, %SDS: 12%)。
負荷心筋血流SPECTの結果から、#14にPCIを施行した。左前下行枝は負荷心筋血流SPECTで虚血を認めたが、抗血小板薬にアレルギーがあるためPCIは見送り、薬物治療で経過観察とした。現在、積極的脂質低下治療および抗強心薬、抗血小板薬により、症状はなく、順調な経過である。
本症例では、臨床的尤度を加味した修正検査前確率が高く、冠動脈CTAを実施したところ2枝に閉塞性病変を認めたため、今後血行再建を考慮するにあたり、さらなるリスク評価のために負荷心筋血流SPECTを実施した。PACIFIC FFRCT studyにおけるFFRCTの特異度は63%、PPVは68%であるのに対し、心筋血流SPECTは特異度93%、PPV88%と高いことから偽陽性が少なく、ルールインに適していると考えられる(表1)。
なお、本症例ではFFRCTも実施しており、左前下行枝のほか左回旋枝#15で虚血をも認めた(下図)が、侵襲的FFRでは左回旋枝#15の虚血は否定された。